2020年七瀬晶(ななせひかる)新刊「ツツヌケ」kindle版3月14日
七瀬晶名義で久しぶりに上梓したサイバーミステリの新刊。
kindle版の発売が2月14日の予定でしたが、3月14日になりました。
Amazonで予約受付中です。(文庫版であればすぐにお手元に届くかと思います)
今まで私の書いてきたサイバーミステリ小説の主人公たちは、
・Project SEVENでは、女子高生ハッカーと若手の天才プログラマー
・神谷翔の事件簿では、元ハッカーの若手のSEと、リーダー格の先輩女性
など、技術者よりのコアな取り合わせでしたが、今回は子供を抱えたシングルマザーが主人公。
勤め先も介護業界で、アパレル系出身というちょっと毛色の違った作品にチャレンジしてみました。
サスペンスとして、あまり技術に詳しくない読者にも楽しんでいただけるよう、心がけたつもりです。
今まで私のサイバーミステリを読んでくれた読者層にどう受け止められたものか不安もありますが、感想などお待ちしております。
↓七瀬晶公式サイトはこちら
七瀬晶の今年の抱負
新年の抱負、というのは、元旦に立てるものなのだろうけれど、何か始めるのに、このタイミングじゃなきゃいけない、なんてものはない。
ネットでの活動もこのところ控えていたのだけれど、今年はチャレンジの年にしようと思う。
忙しいとか面倒とか言っていたら人生終わってしまう。
先延ばしにしていたことや、もう十年以上前から密かに進めているプロジェクトもたくさんある。
ということで、手始めに、ブログを再開。
家の中に銃があるのとないのとでは、どちらが安全だろう?
家の中に銃があるのとないのとでは、どちらが安全だろう? とよく考える。
アメリカに住んでいる私の従姉妹は家の中に銃を置いている。
誰かが来たら撃退できるように。
周りの人達が銃を持っている状況では、そうしたい気持ちも分かる気もする。
だが、それで安全と言えるのだろうか?
銃は暴発することもある。
子供が悪戯していて、怪我をするかもしれない。
何かの間違いで、友人知人を撃ってしまうかもしれない。
酔っぱらった時や、けんかの時に、家族の中で殺し合いになることもないとはいえない。
銃を持った侵入者を前に、すばやく銃を取り出して、相手より先に撃ち返せるのだろうか?
相手が複数人いたら、どうなるのだろうか。家族を人質にとられたら?
反撃するより、中から外が良く見えるように見張っておき、しっかり鍵を閉め、シャッターを下ろして、強盗に入られないように、そもそも狙われないようにするほうが安全なのではないだろうか?
それから、近所の人となかよくし、喧嘩にならないようにすることももちろん重要だ。
かつて日本は、軍部が暴走して戦争への道を走った。
かつてのドイツは、民主主義の中で、ヒットラーを生み出した。
今の政治家は、今の軍部は、今の民衆は、そんなに愚かではないだろうか?
本当に、今だけでなく、五年後、十年後、二十年後も、ずっと賢くいられるだろうか?
この国を、この世界を、この地球を、人類という種族を、私たちはいつまで残していけるだろうか?
武器にまみれたこの地球で。
羊と鋼の森
「羊と鋼の森」を読んでいる。
とてもよい。ゆっくり音読したくなるような静謐さがある。
私も、さほど上手ではないものの、ピアノを弾くので、共感できる部分が少なくない。
以前、ピアノの調律をしてもらった時、音がくぐもってしまったことがある。
直してもらったのだが、それでも音が固くて、気に入らなかった。
私は、それまで出ていたキラキラした音が好きだった。
なんとかして前のような音を出したくて、がんがん鍵盤を叩いているうちに、指を痛めてしまった。
それからだんだん弦がゆるんで音が崩れてくると、少しは音が聞きやすくなってきた。
それから長らく調律はしなかった。
引越した後、目に見えて音がずれてきて、素人の耳にも耐え難くなってきた。
狂ったピアノで弾いていたせいで、耳のほうもずれてきたらしく、半音近く音感が狂ってきた。
私はとうとう調律師を探して電話をかけた。
新しくやってきた調律師さんは、ピアノをざっと触ってみて、
「ダイナミックにずれてますねぇ」
と笑っていた。
私はその前の調律のことを話した。
「ああ、分かります」
調律師さんはうなずいて、ひとつひとつ、音を直していってくれた。
調律を終えると、ピッチの狂っていたピアノから、澄んだきれいな音が出るようになった。
前と同じような、澄んだきらきらした音だ。
以来、同じ調律師の方に毎年調律してもらっている。
いい音を出すには、ピアノだけではなく、弾き手のほうももちろん重要である。
といって、ピアノの腕は急に上達したりはしないし、弾かない日が多いので、むしろ腕が落ちていく部分のほうが多い。
素晴らしい音楽を聞いた後、たとえばコンサートに行った後などは、良い音が出ることがある。
しかし、そうそう何度もコンサートに行っている余裕はない。
数年前、ピアノが上達しない上に指を痛めたりするのに業を煮やして、とある本を買ってみた。
「ピアノスタイル ピアノがうまくなる理由 ヘタな理由 (CD付き)」という本だ。
とても重要なことを学んだ。
どうやら、いきなりピアノを弾くとダメらしい。
ピアノを弾く前に、体操をするのがいいようなのである。
手を回し、肩を回し、前屈し、と身体を動かした後で弾くと、びっくりするくらい音が変わる。
いい音を出すのに、準備体操が必要だったなんて。
ピアノは指先ではなく全身で弾くのだ、人間の身体はどこもつながって一続きなのだ、と、思い知らされる。
ところで、執筆のほうはどうなのだろう。
ひょっとして、身体を動かすと、良いアイディアが降ってきたりして?
いま私は、どんな「準備体操」をしたら、よい文が書けるようになるのか、素敵な物語が書けるのか、模索中である。
新刊情報 「お江戸ありんす草紙 百両の秘本」
10月6日発売の新刊情報。→七瀬 晶 公式ページ
(昨日保存したはずが消えてしまったので書き直し。なんだかHatenaの調子が悪い気がする)
吉原出身のおいちは、実は青海藩の千代姫と双子の姉妹。
ある日、貸本屋の舞鶴屋で働いていたおいちの元に、常連客がやってきて、判じ絵を見せ、その絵が描かれた本を探してほしいと頼む。
その本には、なんと百両の価値があるというのだが……? という物語。
前作のごとく、おいちと千代姫が入れ替わってあれやこれや騒動が繰り広げられる。
前作は、ハラハラドキドキのサスペンス調に書いたのだが、本作は、智慧を使ったやり取りに焦点を置いている。
……と、書いていて何なのだが、前作の情報をブログに掲載していなかった。
というか、今年は割と本を出したのに、良く見たら新刊情報の掲載を丸きりさぼっていた。反省。
まあ、公私ともども、あれやこれやと事情はあるのだが、ぼちぼち見直していきたいと思う。
ちなみにこの「判じ絵」という奴、絵を文字にしてなぞなぞにしたものである。
「鎌の絵」「○(わ)」と「ぬ」という字を並べて、「構わぬ」と読ませる謎染めなどが有名で、現在でも手ぬぐいの柄などに使われている。
寛政七年、山東京伝の煙草屋の引き札(ちらし広告)に判じ絵が使われていたのも、よく紹介されている。
拙著の舞台が寛政五年なので、この件あって、京伝先生が引き札を書いたことにしよう、というのが、私の脳内設定。
しかし、さすがに本一冊分の判じ絵というのは非現実的かと思いつつ、資料を漁っていたところ、なんとこれが実際に存在していた。
著者は、拙著にも登場する曲亭馬琴先生(!)
忙しいところを版元にせっつかれ、ネタもないので判じ物にこじつけたとのこと。
拙著の舞台より五年後の寛政十年、そろそろ売れっ子作家になっていて、構想を練るのが追っつかなかったのであろうか。
しかし、丸一冊判じ物、しかも回答編すらないから、ちょっとシビれる。
代わりにというか、後書きに、
「お子様方が解けない場合は遠慮なく聞きにきてください」
とあった。
人嫌いのイメージのある馬琴先生なので、これまた驚き。
後年、かの「馬琴日記」で、
「紹介状もなく、名も名乗らずに来た訪問客があったので家人に追い返させた。こういう輩が一番困る」
とかぼやいていた馬琴先生だが、「遠慮なく聞きに来て」なんて書いたら、訪問客が来ても致し方ないのではなかろうか?
(名乗らないのはどうかと思うが・・・)
ともあれ、出版業界の黎明期だった江戸時代後期。
当時の先輩作家達も、締切が迫っては頭を抱え、なんとか人と違う趣向を生み出そうと知恵を絞っていたのだなと思うと、なんとも身近に感じられる。
赤本、青本、黄表紙、洒落本、滑稽本、読本とジャンルも増え、画工も腕をふるってどんどん技術力を上げていく。
増えすぎてマンネリ化したのか、末期には質が落ちたと嘆く声もあったようで、読者も増えたはずだが、薄利多売に陥っていたのかもしれない。
まあ、いつの時代も悩みは同じですな。
平和な時代が続くと、文化が花開く。成熟し、爛熟し、またゾロ戦乱の時代がやってきたりする。
戦乱は物語の中だけにして、世は平和であってほしいものだ。
ま、そんな気持ちも込めて書いた小説である。
どうか手に取った皆様に楽しんでいただけますように。
無人島に持っていきたい本
今週のお題「人生に影響を与えた1冊」
大切な本というのはいくつもあるのだが、人生に影響を与えた一冊というとなかなか選びがたい。
無人島に7冊だけ持って行けると言われたら、と考えてみて、ぱっと浮かんだ本は以下だった。
グスコーブドリの伝記(宮沢賢治)
不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)
クリスマス・キャロル(ディケンズ)
神々自身(アイザック・アシモフ)
あなたの人生の物語(テッド・チャン)
聖書(???)
こころ 不思議な転校生(七瀬晶)
私にとってホントに大切なものはなんなのか。
もう少し考えてみよう。