電子書籍〜つれづれに思うこと



クラウド・トラップ 神谷翔のサイバー事件簿3の情報を、メインのホームページに掲載した。

先日からhontoの電子書籍で独占先行発売を始めた本書、事前に1・2巻のキャンペーンをしていたこともあって、滑り出しは順調な模様。
3巻が小説部門の1位、1・2巻が2位につけている。
ただ、電子書籍の市場自体がまだまだ成長途上にあるので、これからというところだ。


紙の本の魅力も捨てがたいのだが、私も最近、書籍の3割くらいは電子で購入している。
本屋に行く時間もない時は非常に便利だ。Amazonで配送してもらっても1日から在庫状況によっては1、2週間かかるのが、「すぐその場で」読めるから素晴らしい。
古書などは電子ファイルでも閲覧できる。便利な世の中になったものだ。
今の調子で容量が増え続けてくれれば、絶版なんて概念もなくなるかもしれない。


自分の書いたものを百年後の人々が読んだらどう思うのか、かねてから興味がある。
百年後には、知の資産とかアイディアとかいうものの概念そのものに大革命が起きているかもしれず、下手をしたら人間という概念にも変化が起きているかもしれない。


昔、「ウェブはバカと暇人のもの」なる本を読んだことがある。
ネットは結局何も生み出さない、何も変えていない、という説で、それはそれで面白く読んだが、必ずしも賛同はできない。ネットがなければ今の私はなかったからだ。
ネットが社会を大きく変えていることは間違いない。それどころか、今では、ネットが個人という概念すら変革しつつあると確信している。
まあ、そのあたりを意識して、ちょっと未来を描いたのが、「クラウド・トラップ」である。


デビュー作のProject SEVENは別として、出版社と企画を始めると、どうしても1巻目は手探り状態のスタートとなる。
3巻目ぐらいになると、ようやくキャラも生き生きしてきて、本当に自分の書きたいことが書けるようになる。
「WEB探偵 昴」も、もし三巻まで出せたら、きっともっと面白くなっていたろうと思う。
「こころ」シリーズも、一番書きたかったテーマは3巻に回ってしまった。


「こころ」の(未発売の)3巻では、400年後の世界を描いている。しかし、400年後には、もっともっと人間も社会も変化しているかもと思う昨今である。
いつかそのさらに400年後を描いてやろうともくろみつつ、今はあべこべに、電子化された古書を読み、100年以上昔の先輩作家達と心の中で対話しながら、過去の時代の物語なぞを書いている。

「こころ 不思議な転校生」文庫版発売

今さらだが7月25日に発売していた「こころ 不思議な転校生」文庫版
その後どうなっているかちょっと心配。
個人的には、次の「こころ 三十一番目の生徒」以上に、
その次の「こころ 時を超えた絆(仮題)」を出したい。
(タイトルは、変更になるかもしれない)
無事に出せたら、神社に御礼参りに行こうと思って、ずいぶん長いことたつ。
神様、お願いします。


そろそろ公式サイトのドメインを変えようかなと考え中。

帰りたい @ 小説推理

月刊小説誌「小説推理」の6月号に、読み切り短編が掲載されました。
「帰りたい」というタイトルの、ちょっと不思議な話です。



この手の文芸誌は、自分が普段読まない作家の文章・世界が垣間見れるというのが魅力ですね。
連載作が多いので、途中から買うととっつきにくいかなぁなんて思うこともあるのですが、たとえ途中であっても、自分の感性にびびっとくる文章というのは目に飛び込んできたりします。
以前そうやって、小説誌で途中から読んで一目惚れ→書籍化後、購入に至ったのが、渡辺淳一さんの「シャトウ ルージュ」と中山 可穂さんの「ケッヘル」。
前者は、普通なら手に取らないであろう官能物ですが、フランス風の上品な描写と世界観がなんとも素晴らしい。後者は、モーツァルトの作品を表す「ケッヘル番号」をタイトルに冠した音楽小説、ミステリでもありロマンスでもあり、壮大な小説です。教会の中で出産される衝撃的なシーンを読んで、ずっと頭から離れず、その後書籍化されたのを知って大喜びで購入しました。



さて今回の「小説推理」。推理小説ばかり乗っているわけではありません。
ルーツをたどると、「推理ストーリー」という五十年以上前に創刊された雑誌に遡るそうで、おそらく最初は推理小説専門だったのでしょうが、現在はいろいろな小説が載っています。



例えば、赤川次郎さんと浅田次郎さんの小説が並んで掲載されています。
超ベテランであり、名前が似ている(?)、という接点以外、作風はまるきり違うお二人、書店でまとめて購入することはなかなかないのでは?
他にも夢枕獏さん、藤田宣永さん……と大御所の連載作が盛りだくさん。
エッセイや漫画なんかも載っています。
6月号には、「帰りたい」の他にもうひとつ読み切りがありまして、「メトロのアッコちゃん」という物語。
どちらも働くサラリーマン・サラリーウーマン向けの話ですが、「帰りたい」が「世にも奇妙な物語」風であるのに対し、「メトロのアッコちゃん」は元気の出る小説です。







→アマゾンでも購入できます



読まれた方いらしたらぜひ感想くださいませ。

 最近の若者



「最近の若者は……」というのは、大昔から繰り返されてきたお決まりの文句だ。
大学に入って早くも「最近の高校生は……」と語る同期生に驚いたが、会社に入れば「最近の学生は……」「最近の新入社員は……」という言葉を聞かされるのはしょっちゅうである。
人はそれぞれなのだから十羽一絡げにくくるのも芸がないのだが、まあ、世代というのは、時代の空気が反映されるものなのだろうなと思う。
遺伝子を除いては、環境が人間を作るのだから、当然である。


さて、私が最近の若者を見ていて思うのは、非常に素直な人間が多いということだ。
場の空気を読みつつ周りに合わせることができる。
おそらく素直になったのは、ゆとり教育で優しく育てられてきたからで、昔のような体育会系の教師にしごかれ、理不尽な要求を突き付けられ、反論しようものなら生意気だと頭を殴られれば反発もしようが、教師や親の物分かりがよければ、反発する理由すらないというわけだ。
また、やみくもに努力するよりは、周囲の先輩から既存のやり方を教わり、マニュアルやテンプレートを手に入れて仕事するのが得意なように見える。
情報化時代に育ったためにそうなったのだろう。
テンプレートがないと弱いが、要領がよく賢いともとれる。


バブル世代の面々には、それを歯がゆく思う人々もいるようだが、優しくて賢い若者が育つのは良いことじゃないかと思っていた。
最近までは。


最近少しだけ心配なのは、彼らの素直さが、空気を読んで従う気風が、「右へ倣え」に流れるのではないかと感じることが出てきたからだ。


年金がなくなると言われれば、不満ながらも「仕方ない」と諦め、消費税が上がりますと言われれば「しょうがないね……」と、秘密保護法が可決されれば「ま、政治のことはよく分からないし専門家に任せりゃいいんじゃない」と。
ブラック企業で精神を病んで辞めさせられても「自分が悪いんだろうな」。
ともかくあらゆる場面で素直で、言ってしまえば権力側から見て「扱いやすい」。
実はこれは若者に限らず私と同じ世代にも見られる光景なのだが、全共闘とかでやたらと熱かった親の世代に比べると諦めが早い。
いや、全共闘時代がよかったと言っているわけではない。
共産主義とやらがおぞましい独裁に成り下がっている光景を目にしているから、おまけに中道やや左寄りの政治家がくそまじめに財政引き締めなんぞをすると経済が鈍化してゆくのを見てしまうから、反動で右に流れる、それが自然であることは確かだ。
しかし、である。


彼らはいずれ、戦地に赴けと言われても、「ま、仕方ないか」となるのだろうか。
命を張ってこいと言われても、憎んでもいない敵を殺せと言われても。
いや、それ以前に、周りの言葉に流されて、見ず知らずの相手を憎まされ、自分は自らの意思でそのように行動しているのだと思い込まされてしまうのかもしれない。


最近の若者というのは、つまるところ未来の日本の羅針盤


右も左もいきつく先は個をないがしろにする全体主義だ。
戦前の若者たちが大きく右に振れて日本が暴走した後、戦後の若者たちは左に振れてテロを起こす者も現れた。
地球中がグローバリズムという激震に揺れ動いている中で、次なる揺れがどのあたりで安定してくれるのかと、私は息を詰めて見守っているのである。

SE神谷翔のサイバー事件簿2


「SE神谷翔のサイバー事件簿2」秋の夜長にぴったりな(?)ミステリ。
裏話他、特設ページはこちら


以下のような方にお勧めです。
 *SE(システムエンジニア)、PM(プロジェクトマネージャ)の方々。
 *ディズニーランド、ディズニーシーが好きな方。
 *ミステリやサスペンスが好きな方。
 *ハッカー物に萌える方。
 *楽しみながらネットやセキュリティの勉強がしたい方。
 *アノニマス、遠隔操作ウイルス、SQLインジェクションなどに興味のある方。
 *電車などで気軽に暇つぶしがしたい方。
1巻よりちょっと分厚くなって登場。2013年10月10日発売。

理由




理由なんて分からない
だけど、どうにかして私は
このレースに参加するように
いつからか決まっていたのだ



参加する理由なら
いくらでも思いつく
参加しない理由だって
同じくらい思いつく



それがどんな道であれ
私たちは与えられた道を
必死になって駆け抜けるしかない
それが人生だから



私はこの道を
微笑みながら 楽しみながら
時には怒り 時には涙にくれながら
精一杯の誇りを持って 駆け抜ける



この道を 誰かが与えてくれたから
この道を選んだのは ほかならぬ私なのだから
この道は すなわち私自身であるから
私が死んでも この道はきっと残りづつけるから



私の走った道のりを
他の誰かも走るだろう
私よりずっと速いスピードで
鮮やかに駆け抜けていくだろう



「あの人はここを駆け抜けていった」と
ささやいてくれる人はいるだろうか
そう、きっとそれが理由
だから私は走り続ける



このレースを
かけがえのないレースを
私のために
あなたのために